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2008/03/20(木)

「 学 校 だ よ り 」 平成19年度3月号

Posted by 校長 野口直人 at 10:55 午後
Edited on: 2008/03/20(木) 11:04 午後
Categories: 001_お知らせ, 002_校長より

「そんな軽い命なら私にください」


校 長  野 口  直 人

  さる1月13日、お忙しい仕事のかたわら、地域活動にも情熱を注ぎ、“命の尊さ”を青少年に、“魂の叫び”として訴え続けてこられた渡部成俊氏が、憎き病の前についに力つき、安らかに永眠なさいました。

  本校でも、昨年の4月12日、開校60周年記念講演『命の講演』を渡部成俊氏に行っていただきました。それ以来、渡部氏は学校によく寄っていただきました。その際、私は、一つのお願いと、一つの約束をしました。一つのお願いとは、江戸川区の106校の小中学校すべてに講演を行っていただきたいということ、そして一つの約束とは、余命宣告後二度目の桜を見ることでした。どちらも、もう少しで到達できたのに、とうとう、かないませんでした。4月の学校だよりに書きましたように、渡部氏は昨年の4月の講演の中で、“桜の花の透き間から、青空がパッと広がる、あの美しさは、60年間生きてきて、こんなにきれいなものとは思わなかった。”“桜って、なんてきれいなんだろう、生きるってなんてすばらしいんだろう。”“今年の桜は、きれいだった!!”・・・・・・とお話しされていたので、私は、「来年も、桜を見ましょうよ!」と、渡部氏と約束していたのです。

しかし、渡部氏の思いは、その著書「そんな軽い命なら私にください」に残されたのです。皆様には、その著書の発刊に際しても、ご購入のご協力をいただいたのですが、その後、発刊元の大和書房が読後感想文を募集していたので、生徒達に応募してもらい、その写しを渡部氏にもお送りしました。そして、この度、その結果が到着しました。優秀作には、本校3年生の遠藤由貴さん、佳作には、1年生の大塚拓弥くん、秋山彩希さん、貫井聖人くんが選ばれたのです。

ここに遠藤由貴さんの優秀作をご紹介致します。

「私と父と大きな変化」 江戸川区立瑞江中学校 3年 遠藤由貴   

  私は、父が嫌いでした。色々と口うるさいし、ちょっとしたことで怒るし。母がいなくなった日から、ずっと父のことを憎んでいました、話をすることすらほとんど無 いくらいに。
  ですが、渡部さんの生き方を聞いたり、本を読んだりして、今なら少しだけ父のことを、好きとは言えないにしても、それに近い感じに思える気がします。
  私が今、学校とか塾とかに行ったり、遊んだりできるのだって、何だかんだ言っても、父のお陰であり、口うるさく言うのも、心配してくれるからであり、親の心、子知らず、とは本当だと実感しました。失う前に気づけてよかった、失ってからでは遅すぎるから。
  渡部さんと出会えたことは、私にとって、とても意味のあることで、とても大きな変化を与えてくれました。
  他者とのかかわりの大切さや、生きることの意味、人生を送るうえで大切な、人が人として生きるために重要な、よく分からないけど何かを学んだような気がします。
  人は一人で生きられないし、一人でないから生きようと思う、いや、思うことができる。
  それは、本当のことでありながら、私はそのことを分かっていませんでした。分かろうとしていませんでした。でも、今なら、少しだけなら分かることができます。
  自分以外の誰かの幸せを願うことだって、今までのようじゃなくて、もっと前のときのように、父と真正面から話すことだって、今ならできます。
  だから、渡部さんには、もっともっと長生きしてほしいと思います。私みたいに、大切なことに気づくことのできなかった人に、大切な人を思うことに気づかせてあげてほしいから。
  それは、きっとその人にとって、大切な出会いになるはずだから。

今、渡部氏は、天国で桜の満開を待ち侘びていらっしゃることでしょう。 ご冥福を、お祈り申し上げます。

 今、渡部氏は、天国で桜の満開を待ち侘びていらっしゃることでしょう。

  ご冥福を、お祈り申し上げます。