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2007/12/11(火)

「 学 校 だ よ り 」 平成19年度11月号

Posted by 校長 野口直人 at 10:13 午前
Edited on: 2007/12/11(火) 10:19 午前
Categories: 001_お知らせ, 002_校長より

「学力を伸ばすには」

校長 野口 直人

  平成11年頃、分数の計算が出来ない大学生がいるということが話題になり、学力低下が社会問題化してきました。そして、その原因とされたのが、学校週5日制のもとで学習内容を3割削減した「ゆとり教育」でした。そして平成16年、前年実施のOECD(経済協力開発機構)が行うPISA(学習到達度調査)の結果が公表されると、「ゆとり教育」への批判はピークに達しました。この調査の一つの“読解力”の日本の成績が、平成12年の8位から14位に落ちたからです。しかし、平成15年の調査対象は、厳密な意味で「ゆとり教育」を受けた世代ではないので、この「ゆとり教育」が原因かどうかは定かではないのです。
  どちらにしても、“学力低下”の原因を論ずるより以前に、果たして、学力は低下しているのか、低下していないのかの論争さえあります。そもそも、“学力”自体のとらえ方さえが、あいまいなのです。
  もし、学力が低下したとして“学力低下”の原因を、他のことにも求めるならば、第一に、子どものころにテレビを長時間見たり、テレビゲームで長時間遊んだりで、言語能力や思考力が発達しなかったりしたこと、第二に、子どもの学習意欲の低下や、家庭学習時間や読書の量が減少したこと、等も考えられるでしょう。『百ます計算』で有名な陰山校長は、「テレビの視聴時間を減らし。早く寝れば、睡眠時間を十分にとることができ、早起きし、朝食をしっかり食べられる。“早寝、早起き、朝ごはん”により、子どもの体力がつけば自ずと集中力がつき、学習の効率がよくなる。家族と毎日食事を共にすれば、親子のコミュニケーションが活発になる。特にコミュニケーションの力が学力の源だ」と、言います。これらのことは、“学力の低下”の原因が、何であろうと、学力を伸ばす手立てとして、大いに参考になるのではないでしょうか。
  このような疑問を抱えながらも、社会の大勢は“学力低下”を認め、そして、その原因は「ゆとり教育」、という流れになっています。そして今、中央教育審議会の教育課程部会で審議されているのが、平成23年度から実施の可能性のある新しい学習指導要領です。  その新しい学習指導要領の中で、基本的な考え方として、「生きる力を支える確かな学力は、①基礎的な知識や技能②課題解決に必要な思考力・判断力・表現力③学習意欲、で形成される」としています。そして「ゆとり教育」の是正として、授業時間を増やします。中学校では、1年は、つまずきやすい数学を増やし、2年は、観察や実験を通した面白さに触れさせるために理科を増やし、3年は、近現代史を中心とした歴史の学習を充実させるため社会を増やします。また、簡単なコミュニケーション能力を身につけるための外国語(英語)と、体の発達が著しい時期であることを踏まえた保健体育は、3年間を通して増やします。そして、選択時間はなくし、総合的な学習時間は減らすことによって、差し引き、週の授業時間は各学年で1コマ増えます。

  私の考えでは、今の子どもの状態は、“学力低下”ではなく、“学力の一部が低下”だと思います。しかも、その原因は全面的に「ゆとり教育」にあるのではなく、“ゆとり”が“ゆるみ”になってしまっている部分と、中程で述べた原因も大いに考えられるのではないでしょうか。だから、この度の学習指導要領の改定も、学力育成の一つの道であり、陰山校長の言うところの「生活リズムの改善」も、学力育成の一つの道なのではないしょうか。
  少なくとも、“ゆとり”をすべて無くしてしまうのは、いけないと思います。従って、学習指導要領の改訂により、授業時数を増やすことも、程よい増加であることを期待致します。